猫脳髄

東京物語の猫脳髄のレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.4
ニューデジタルリマスター版。笠智衆と東山千栄子の老夫婦が子どもたちを訪ねて尾道から東京にやってくる。開業医の山村聡や美容院を経営する杉村春子ら実子たちは忙しさにかまけて邪険にするが、戦死した息子の嫁・原節子だけがかいがいしく二人の面倒を見てくれる。思うに任せない実子たちへの不満を飲み込み、「今が一番いい時」と言い聞かせながら、二人は尾道に戻るが…という筋書き。

小津の少なくとも戦後の作品は、それまでの家族・家庭観が緩やかに崩壊・変化するさまを取り扱うが、本作はこのテーマをもっともしみじみと映し出す。ヴィジュアル上は笠智衆と原節子がよく取り上げられるが、本作の最重要人物は母親の東山千栄子だろう。穏やかで時流に抗うよりはそれを受け止め、「一番いい時」と飲み込む諦念。そのいじらしさがあわれを誘う。

しかし、小津作品を連続して観ていると、笠智衆の年齢設定がおかしくて面食らう。実年齢では杉村春子と1歳違いなのだが…(9/37/54)。
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