Uえい

東京物語のUえいのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
直近だとカウリスマキ、ヴェンダース監督など、いろんな監督から名前があがる小津監督だが、見たことが無かった。そろそろ見ないとなと義務感強めの状態で見始めてしまったのだが、知らないはずの郷愁を感じ、重いテーマに心が震える傑作だった。

尾道に住んでいる老夫婦は子供達に会いに東京に行くことにした。東京の長男は町医者として忙しくしていた。次女も東京にいるが美容院を営んでいて、同じく忙しかった。

せっかく東京にきた二人だが、邪魔者扱いされてしまう。そんな中、戦争で亡くなった次男の妻紀子だけが二人を案内するなど親身に接してくれた。

そして尾道に帰ってすぐ、東京の子供の元に、母の危篤を知らせる電報が届くのだった。

まず、よく言われる事だけど、独特の構図と、カットのテンポ感がすごく好きだった。ローアングルで、西洋の遠近法がかっちり決まった絵画のような構図が印象に残る。人の配置なども完璧に制御されているようで、キューブリックやウェスアンダーソンの様な病的な何かを感じるほど。カットについても昔のアクションゲームのような定点カメラが切り替って動きを追ったり、セリフを喋る時にアップになる感じは浦沢直樹の漫画を連想した。

そして、なんといっても話が良すぎる。一つ取り上げるなら、全人類に発生するカノンイベントとも言える、親との死別。自分の死については向き合いやすいけど、親や他人の死について事前に向き合っておくのは難しいし、いつか必ず起きてしまうのは「イット・フォローズ」的な常に付き纏われている様な恐怖を感じた。確かギャスパーノエもコロナ禍に小津など日本映画を見て「VORTEX」に生かしたと言っていたが、本作の影響を受けたと思われる箇所を思い出す。
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