初めての小津はやはり今作から。
普段はアキ・カウリスマキやヴィム・ヴェンダースをはじめとした小津からの影響を公言している監督の作品を好んで観ている。
だから、わりかしすんなり入れるかと思っていたものの、今まで少なくとも日本映画でここまで古いものは観たことが無かった為、まず、言葉の聞き取りにくさにたじろいでしまった。(字幕ってすごいね)
その辺りの慣れが来て視覚表現にも目が配れる様になり、小津が何故これほど評価されているのか一瞬のうちに理解した。
なるほど確かに欧州の巨匠の源流だな、と感じる構図や役者の動かし方があまりにも多過ぎて、終始、凄まじさに笑いが止まらなくなっていた。
デフォルメされた人間の機微や、小道具や扉など全ての配置で何層にも彩られた構図
役者が話しているシーンをピンで撮影する手法は正にマジック。
ストーリーの進みが非常にゆったりしているという点はやはり事実で、その辺りはカウリスマキの多くの作品が70-90分に絞っている理由が分かった気がする。
やはりストーリーは主として存在するものではなく、人物を動かす機構にすぎないのかもしれない。だから小津にストーリーを期待すると評価が分かれる。
これが広く認められていた50年代に一度戻ってみたい。