雨

東京物語の雨のレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
もう涙が止まらない。尾道に両親と末っ子の妹を残し上京した兄妹たち。医者、美容師、国鉄勤務とお国言葉を捨てそれぞれの生活を忙しく過ごす。列車に乗り16時間もかけて東京に出てきた両親は邪魔者扱い。8年も前に戦死した弟のお嫁さんに面倒を見させ、景色はよいが安宿でくつろげない熱海に旅行にやる。尾道に戻った両親は、孫たちより子どもたちがやっぱりかわいいもんだなぁと老いた顔に柔らかな笑みを浮かべながら茶の間で話す。そんなあったかい気持ちは東京の子どもたちにはもう届かない。両親が1番心を通わせていたのは戦死した息子の嫁、紀子。心の優しい、清らかで真っ直ぐな女性。私は紀子のような女性でありたい。利己的で、忙しく毎日を過ごし目先のすぐ手に入る偽りの充実感や達成感でこれからの人生を過ごすのはいけない。家族や友人をもっと大切にしたい。最後は涙が止まらなくなり、小津の描く「ものの哀れ」に全身が包まれたようだった。
雨