あべぴより

東京物語のあべぴよりのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.3
旅行に来た両親に対し、仕事だなんだと余り構ってやらない息子娘たち。
そして完膚なきまでに徹底的にクソも可愛くないカス孫。

あくまでも家族を象徴した映画で、その家族の少し外側にいる仮想的神的存在原節子がコントラストを付けてる。

東京と尾道の距離表現も絶妙で、
「東京も随分近くなった、昨日尾道を発って、もう皆と会えたよ」
とお母さんが言って明るい雰囲気だったのが、
「(尾道へ)伺いたいです、もう少し近ければ」
という後半の原節子の一言で絶望的な距離感が生まれるんだから凄い。

血縁が直接なくとも義理の両親へ優しく接する原節子のようにありたいと強く思わせられるような作用が張り巡らされているけれど、終盤、「誰もこうはいられないんですよ、私ですら」と原節子本人から結論を叩きつけられる。

という理屈は抜きに、ワンシーンワンシーンの哀愁が凄くって、哀愁の天才だなって思いました、小津さん…
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