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東京物語のキャンのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
戦後から幾年か経ったある年の話。
尾道に住む老夫婦が東京に居を構える子どもたちを訪ねに行く。夫婦には5人の子がいて、皆、成人している。長男と長女は東京に、三男坊は大阪、末娘は尾道に残っている。次男は東京で結婚したが、戦争に駆り出されてそのまま帰らぬ人になった。
老夫婦はまず長男の家を訪ねるが、町医者稼業は休日がなく、一緒に出かけることもできない。
次に長女のもとに向かうが、こちらも美容院が忙しく、なかなか相手ができない。
わざわざ尾道から出向いてきたというのに実子が相手をしてくれない中で、次男の妻で今は商社に勤めながら1人暮らしをしている紀子だけが夫婦を手厚くもてなすのであった。

決して、古臭い話ではありません。
現代にも通じるという意味で古典的な作品です。
大都市と地方という関係が存在し続ける限り、この作品はいつの時代の人にも通用するでしょう。
私は地方出身で今は東京に住んでいる身なので、本作を涙なしでは観ることができませんでした。
特に本作の最後のあたり、紀子と末妹の会話、紀子と父との会話は私の心に痛烈に響きました。

ストーリーはさることながら、本作の演出・構成・キャストも非常に良いと思います。
先ず、一切説明口調の台詞がありません。しかし、自然と話が理解できます。
また、この作品は静的で落ち着いた場面が大部分を占めるのですが、それを飽きさせないような試みが盛り込まれています。
そして、キャストに関しては原節子がやはり、飛び抜けて素晴らしい。
特に注目していただきたいのは、アパートでの夫人との会話とラストの父との会話との対比です。

是非、誰もに見ていただきたい映画。
本当にオススメです。
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