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暴君ネロのみおこしのレビュー・感想・評価

暴君ネロ(1932年製作の映画)
3.2
歴史上の偉人を描いたDVDボックスの中に入っていた一本。ローマ帝国史上最凶とも言えるネロの治世下で奮闘する人々を描いた作品。再び監督はセシル・B・デミルです。

とは言え、観ながら気づいてしまったのがタイトルの『暴君ネロ』のミスマッチぶり。あくまで主役はフレデリック・マーチ扮するマーカス将軍であって、主演は彼。名優チャールズ・ロートン扮するネロ役は鬼気迫っていてとても良かったけれど、決してタイトルロールではなかったのでかなり違和感でした...。
そして違和感その2は、昨年鑑賞した『クォ・ヴァディス』とのあらすじの酷似っぷり。本作の原作は『十字架の徴』という作品なのですが、結末以外はまるで『クォ・ヴァディス』と同じ原作としか思えず。調べてもやはりその点は指摘されていて、『クォ・ヴァディス』の改作がこちらのようです。当時は著作権法が緩かったのもあり、こういった問題が普通に起きてしまっていたようでまた勉強になりました。

ポッパエア役のクローデット・コルベールの悪女っぷりと、ラストシーンのネロによる闘技場でのキリスト教徒迫害シーンが最も印象に残りました。特に後者は大量のライオンや象、クマなどが登場して、民に襲いかかるので圧巻。直接的なシーンはないにせよ、CGもない時代にこんなにも真に迫ったショッキングなシーンを作り上げていたと思うと衝撃です。
また、映画史的に面白かった点としては、ヘイズ・コードが敷かれるギリギリのタイミングでの封切りだったようで、ヌードまがいのシーンがあったり、そもそもセリフが直接的だったりと、ハリウッド黄金期を思うと考えられない描写がいくつかありました。1920年代〜1932年はこういったセンセーショナルな演出が許されていて、この直後から1960年代くらいまでは逆に一切そういった表現が統制されるようになったわけで、歴史の一端を垣間見た気がしてとても興味深かったです。
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