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カポーティのHarioのレビュー・感想・評価

カポーティ(2005年製作の映画)
4.7
結局"In Cold Blood"を読み終えずに映画鑑賞になってしまったが、 本を読んだ時に頭の中に浮かんだカンザスの情景がそのまま映し出されていた。中西部の田舎町は大変寒々しく美しかった。

『フォックス・キャッチャー』でも印象的だった閉塞的な風景の描き方と色が、本当に素晴らしく、観客をこれからどういう世界に連れて行くのか示唆したビジュアルの作りに圧倒された。そしてフレーミングの美しさ。部屋や列車の中のカポーティを映す時の構図の美しさに惚れ惚れした。

フィリップ・シーモア・ホフマン…
あれから彼の姿を映画の中で見るたびに物語に関係なく泣いてしまう。今作は特に圧巻の演技で、ホフマンだとわかっているのに、カポーティという人物として観ている。時折見せるホフマンの表情にハッとなり、また泣いてしまう。こんなに愛おしい人の新しい映画はもう2度と観れないんだと毎回同じことを思ってしまう。

キャサリン・キーナーが出てることに歓喜。列車のシーンでホフマンとキーナーが並んでいるショットを観るだけで幸せだと思った。しかも劇中にキーナーの役が『アラバマ物語』の原作者ハーパー・リーだと知り、カポーティとハーパー・リーの関係も知らなかった私にとって嬉しい驚きだった。他にもクリス・クーパーやクリフトン・コリンズ・Jr(The Eventのトーマス)と馴染みの役者が揃っていた。

物語が進むにつれ、カポーティという人物とは一体…?と考えながら魅了されていった。『フォックス・キャッチャー』の時も感じたが、ベネット・ミラー監督は人物像を静かにだが深く深く描く。名役者によって化学反応が起き、観客の心にずっしりと残る。

昔読んだ「夜の樹」の中の短編はどれも不思議だったり意味がわからなかったり、あまり読みやすいとは言い難かったが、なぜか読んだ時に浮かんだビジュアルが鮮明に残っている。今またIn Cold Bloodを読み始めている。
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