うめ

カポーティのうめのレビュー・感想・評価

カポーティ(2005年製作の映画)
4.1
過去鑑賞より。

既に作家として名を残したトルーマン・カポーティ。
彼が次回作にえらんだのは、実際に起きた惨殺事件だった。
取材し、「冷血」という一冊になるまでを描いた作品。

犯人に少しずつ近づいていくカポーティ。
共鳴し始める心。
フィリップ・シーモア・ホフマンの演技が、凄まじい。
決して他人には見せない、心の沼の底に沈められているもの。
それを掬い上げようとする為には、自分から入っていくしかない。
そして、気づく自分の中にも沼がある事に。
相手の心の水面に写し出される己の中の闇。
そこに手を伸ばす時…
過剰な味付けをせずに、じっくりと演じているフィリップ。
鬼気迫るものがありました。

作家が書くという事は、自分の身と心を削っているんでしょうね。
そして、それは役者も一緒なのかもしれない。
心の闇を抱え、それによって連れていかれてしまったフィリップ。
その闇が彼の演技に深みを出していたとはいえ…
彼の死が惜しまれてならない。
うめ

うめ