佐藤克巳

非常線の女の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

非常線の女(1933年製作の映画)
5.0
小津安二郎監督のダンディズムな作品系列で、「朗らかに歩め」に連なる与太者が、聖女に翻弄された様に回心して行くストーリーだが、何故か親友清水宏の同年「港の日本娘」と同様毛糸の玉が鍵になっている気がする。拳闘崩れの与太者岡譲二とタイピストでフラッパー田中絹代が同棲生活をしていたが、ある時岡のグループに仲間入りしたいと学生三井秀夫が懇願する。やがて三井が札付きになり、レコード店員姉水久保澄子は岡に弟が回心するよう依頼する。岡は、水久保に一目惚れし入れ上げる。田中は、水久保を呼び出し拳銃を突きつけるが、逆に抱きついてキッスして去る。岡の部屋で家庭的な女になりたいとせがむと岡に追い出される。会社社長の息子南條康雄の誘惑を跳ね除け再び岡の部屋戻ると、岡が足を洗うと誓ったが、三井の不始末から水久保が窮地に立ち、岡と田中が南條を拳銃で脅し金を奪って逃走、岡は三井に金を渡し部屋に戻ると田中は自首を願い出る。警察が迫る中、田中が拳銃を発射し岡の片足を撃った。二人は自首して再起を誓う。部屋には毛糸の玉が残された。サスペンス感とモダンなファッション感覚が秀でた傑作で、私の大好きな作品である。
佐藤克巳

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