ともぞう

西部戦線異状なしのともぞうのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
3.7
この映画は1930年だから今から90年以上も前。世界で最初の反戦映画。教師に煽られ、意気揚々と戦場に赴く若者達。でも、行けば食べる物もなく、毎日仲間が死ぬ。敵であるフランス兵を刺し殺して、その男に妻子がいることを知り、嘆く。フランス娘と楽しい一時を過ごす。なぜ、戦争をして殺し合わないといけないのか?最後の蝶々のシーンは切ない。これだけ完成度の高い映画の後に、ドイツではヒトラーが政権を取り、第二次世界大戦が始まったことが更に考えさせられる。

〈あらすじ〉
欧州大戦に於て西部戦線の戦いたけなわなる頃。ドイツのある町の学校の窓下を戦場に向かう大部隊が通過しつつある。そこの教室では老教師カントレックが生徒達に愛国主義を吹き込んでいる。進軍の雑音と教師の弁舌に若い生徒達の血潮は燃えて彼らは直ちに出征を志願する。ポール、アルバート、ケムメリッヒ、ミュラー、ベーム、ピーター達がその中に数えられる。入隊した第一夜、かつて町の郵便配達であったヒンメルストスは曹長として彼らの前に立つ。そして苛酷な彼の訓練の後若者等は戦場へ送り出される。戦線後部の輸送所に於てポール達は最初の戦慄を感じる。ポール達は老兵に食物を求めてかえって彼らに嘲笑される。古参兵中の腕利きカチンスキーは豚を盗んで来て彼らの前に食物を供する。かくて彼らは初めて戦場へ身を晒す。それはカチンスキーに導かれた鉄条網張りの任務である。天空と大地とが厳しい砲火に轟き渡っている中に無残に碎かれてゆく若者達の英雄主義。ついに塹壕の中でベームは砲音によってヒステリーになる。ケムメリッヒもまた狂って飛び出したため脚部を打ち砕かれる。こうして彼らは幾日かを塹壕の中で仏軍の来襲を待たされるのである。糧秣車の前で兵士は分配を待っている。コックは150人分を用意しながら今は80名に減じた彼らに食糧を与えることに勿体をつける。ポール達は病床のケムメリッヒに長靴を所望してかえってケムメリッヒに障害者となったことを知らせ彼を狂乱させる。やがてポールはケムメリッヒの死んでいく態を目前に見せつけられる。教会付近の激戦でポールは腕を傷め爆破のために掘られた穴の中に砲火を避けたがその時飛び込んで来た仏兵を突き刺してしまう。終夜ポールは死に行く仏兵の傍らにあって戦争に対する疑惑と深い悔恨に苦しめられる。陣地へ戻ったポールは僚友と運河の流れで体を洗う。その時に通りかかった岸辺のフランス娘達に彼らは異性の匂いを感ずる。ポールはその後右腹部に負傷し保養のため故郷の町に帰る。だが彼の目に映ったものは教室で相変わらず少年達に愛国心を吹き込んでいるカントレックの姿とビールを飲みながら勝手な戦争論を闘かわしている金持ちや重役の姿であった。病める老母と姉とを跡に残して再び戦場へ来たポールは16歳の少年兵と老兵チャーデンの分隊に入る。カチンスキーをも訪ねたがその久しぶりの再会中カチンスキーは敵弾に命を落とす。そしてポール自身もある一日塹壕から蝶を捕らえんとする所を敵兵に撃ち殺されてしまった。だが司令部への報告は彼の死などには関係なく「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」と伝えられた。
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