せーじ

西部戦線異状なしのせーじのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
4.5
権力を手にした瞬間から、毅然とそれを振りかざし舐められまいと威圧的態度をとる器の小さな上官。
「祖国に捧げる死は甘美である」と言葉で煽り扇動し戦地へ若者を旅立たせる教師。熱狂し戦地へ行くことを決める若者。
戦地で待っていたのは、満足に食べるものもなく希望が一切見えず、1人また1人と隣の誰か命を落としていく日常。そして日々の戦線は悪化の一途。
数年にも及ぶ出兵の末に故郷に一時帰還すると、戦況を知らずに机上の空論を並べる街の面々。母校の学生に命の大切さを語るも、学生から「臆病者」と罵られ、、、
有事であることを実感していない世間の人々と、日々戦場に身を置いている自分たち兵士。
戻るべきところは故郷ではなく戦地とさえも感じてしまう。

祖国のために意気揚々と出兵した若者の多くは、十字架となって土に眠る。

悲しいかな、
この映画公開から10年もしないうちに、世界はまた戦争へと突入するのであった。
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