toyu18l98

戦場のメリークリスマスのtoyu18l98のレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.8
カンヌ狙った、と知って納得。
確かにカンヌ受けしそうに作られてる。
でも作られた年を考えると斬新すぎて奇跡に思える。
すごい、天才すぎでは???

戦時中の、日本とイギリスという異文化の対比を少数の登場人物に絶妙に投影している。
分かり合うこと、分かり合えないこと、理解したと口にできない『戦時下』の状況。
人間と人間が惹かれたり、分かり合ったりすること、そうできること、それでも越えられないもの、越えられたものが見進めるうちに眼前に並べられていく。
でもそれをあからさまにするわけでもなく、見えない葛藤や説明せずに内側に訴えてくる。

スパイク・リーの『セントアンナの奇跡』を思い出した。
セントアンナはどちらかというと差別と宗教がテーマだったけど、こちらは反戦、国を背にした人と人に降り注ぐ毒。
そして毒を雪いだ先に垣間見えるもの。

レビューとかで見る、同性愛的な印象は今見たからかそれほど。
親愛というか友愛というか、人間的な魅力(いやまあデヴィッドボウイだから魅力ムンムンなんですけど)を目にした国と同一化していたい個人の葛藤と憧憬みたいなのに感じた。
ハラとローレンスの方が問答していて分かりやすい。会話がないとヨノイみたいになるのかね。

ローレンスは日本、日本人の死生観を理解できずともハラを分かろうとして、ハラはローレンスと接するうちにキリスト教的な死生観を認め始める。

集団や個、当時の日本の帝国主義的な毒と底に流れる歪んだ武士道。

最後。
ローレンスとセリアズにはサンタクロースは現れたけど、日本人(と表現するとして)のハラには現れない。
ハラだって、サンタクロースに救われたいのか、それでも信じていた(そして自分の礎でもあった)武士道に殉じたいのか、決めきれていなかった気がする。
それでも最後、彼の心はローレンスによって救われたんじゃないかな。

教授の音楽最高!
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