かさい

戦場のメリークリスマスのかさいのネタバレレビュー・内容・結末

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

昔、「贈与論」という理論をかじった。誰かから何か贈り物をもらうと、受け取った側は何かしらのお返しをして、貸し借りをゼロにしなければならないという、原始的な理論だ。
例えば、誕生日にプレゼントをもらえば、相手の誕生日にお返しにプレゼントを贈る。これで貸し借りゼロになる。では、命を助けてもらった場合はどうだろう。一生かけてもお返しをすることはできないかもしれない、一生の借りだ。戦争映画では命の貸し借りが主題になることが多い。「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」など。
ところが、この映画は贈与論をまるっきり無視している。ハラ軍曹の一存で助けられたロレンスは、処刑される前の彼と穏やかに会話をして去る。セリアズの接吻を受けたヨノイ大尉は、彼の髪を切りとって去る。
この映画に贈与論のような関係性はどこにもない。彼らの関係性は「奪うか奪われるかの関係性」である。舞台は戦時中、命も含めて奪うか奪われるかである。誰かに何か与えてもお返しは見込めない。戦争とは美化されがちなものであるが、本来はこのように理不尽で不条理であるべきということを認識しないといけない。
ハラ軍曹の「メリークリスマス」に対するロレンスの返事(お返し)はないまま映画は終わる。
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