ずみ

戦場のメリークリスマスのずみのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
5.0
最後のシーンに至るまでの流れが非常に端麗なストーリーで構築されている。ただ、ストーリーの美しさだけではこの映画は成り立たなかったであろう。

この映画で欠かす事ができないのは何よりもセリアズの存在である。彼の持つ筆舌に尽くしがたい美しさとその存在感はこの映画の世界を壊さずに一段高い段階にまで持ち上げる働きがある。表情ひとつ、仕草ひとつ、口元からこぼれ出る言葉ひとつ、全てがあまりに美しすぎる。端的に言ってしまえば個性やら癖といわれるものかもしれないが、セリアズの存在感にはそれ以上の何か言葉にできないような存在感があるのだろう。反抗的で一見一部の観客から煙たがられるような存在のはずなのにどうしてであろうか、ついつい引き込まれてしまう。これがデヴィッド・ボウイの持つ魅了なのだろう。ついつい、セリアズを見ながらその奥にあるデヴィッド・ボウイを投影し、セリアズの魅力に引き込まれてしまうのだ。こんな素敵な映画は他にないだろう。

この美しいストーリは最後の「はらさん」とのやりとりで印象深い締めくくりを迎える。拙い英語の発音の向こうに見出せるローレンスとハラとの絆に心を打たれたものは多いはずだ。4年の時を経てクリスマスを語り合う二人の精神的な連帯とその連帯を慈しむように語り合う二人の姿は最後の言葉で昇華される

「メリークリスマス、メリークリスマス、Mr,ローレンス」

この映画は映画史に残る名作と言われるべき作品だろう。
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