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ノッティングヒルの恋人のkyonのレビュー・感想・評価

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)
4.0
"忘れないで。私だって好きな人の前で愛されたいと願う1人の女性よ。"

瞳に涙を溜めながらそうつぶやくアナ(ジュリア・ロバーツ)の顔にぐっときてしまった。


イギリスのノッティングヒルを舞台に、世界的な有名女優アナ・スコットと書店員として働く一般人のウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)のロマンスを描いた本作。

やっぱりタイトルはじまりから流れるエルヴィス・コステロのSHEがいい〜!!

まさに「予感」させるよね。

芸能人と一般人のラブロマンスであり、2人の出会いはまさに偶然からはじまって、そこでキス!!わお、みたいな展開なんだけれど、この作品を観ながらぐっと引き込まれてしまうのは、恋愛の本質的な部分を扱っているからだと思う。

メインの2人も含め、友人たちもみな30〜40代?設定で、ある程度経験をした末に愛する人に出会うという流れ。そういう意味ではアナもウィリアムもピュアではないし、なんならウィリアムは離婚歴あり。

だからこそ人生の中で素敵な人にはたくさん出会ってきたけど、この人だという人に巡り会えたのは奇跡的だという2人の状況に説得力が生まれる。

アナの女性像も良かった。
いわゆる芸能人ではあるけれど、そんな彼女がパパラッチたちに対して苦しんでいる部分や好き!と思えば無邪気にキスしてしまうところ、それに理不尽ではあるけれどタッカーにキレてしまうところ。

ここでもギルダが台詞だけれど、間接的に登場したのもちょっとじんわりしてしまった。だって1946年の作品が1999年の作品に登場してるんだよ?作品は生み出されればずっと想起され続けるんだって嬉しくなった。

それに関連して、女優と娼婦が重ね合わされ、アナに心ない言葉を一般人が無意識に投げかける場面も印象的だった。この関係性、ほんと語るにはハードル高いけど、今だからこそ何かしら言えることありそう…。

そして衣装。
アナは有名な芸能人ではあるけれど、オフは比較的カジュアルでボーイッシュな感じ。確かに綺麗だけれどどこか天真爛漫さがあるから可愛い系ではないかも。冒頭のベレー帽に革ジャン、Tシャツ、ジーンズ、オールドVANSにサングラスはアナの普段のイメージがわかる。

それでウィリアムが偶然にも(笑)、道端でオレンジジュースをアナにぶちまけてしまい、着替えたあとの黒のへそ出しセットアップも良かったな。あとストライプのオーバーシャツ。そう、こういう普段着のアナが魅力的に見えるバランスが良い。

かつ、オンの場所でも彼女はパンツがメインみたいだし、この作品では変身やギャップというよりは地続きになっている。(むしろ芸能人も1人の人間である、と言っているくらいだから、そこがメインかも)

だからこそ、ウィリアムに告白しに行くアナの服装は目立った。いつもパンツが多くて、カジュアルなのに、この場面ではまさにブルー系のコンサバなニットのアンサンブルにスカート。髪型もストレートでどこかかしこまった感じ。

もちろんアナがウィリアムに対してやったことってなかなかひどいから(笑)、そういった意味では落ち着いているのかもだけれど、これまでのアナの姿と比べるとやっぱり違和感が。

でも例えばこれが計算されたもので、アナが1人の女性としてウィリアムに告白する、を強調するならありかもなって考える。アナからすればこれからあの人に告白する、って決めて行っているわけだから、そりゃ女性らしい格好したくなるし、ちょっとかしこまる感じはあるかも。そう考えると面白い。

そしてそんな2人の有名な記者会見のシーン。2人の出会いから別れ、そして再会しまた別れ、を観ている観客からしたら良かった良かった〜〜!!のオンパレード。

そう、好きな人と結ばれるって例外なく奇跡的なんだよね、って深く頷いた深夜3時でした。笑
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