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魔女の宅急便のemeronのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.2
パイ嫌いの少女のことを擁護する展開を勝手に思い浮かべてしまった

昔、祖母の家に遊びに行った時に出されたニシンとカボチャのパイはとても好きになれる味ではなかったが
目の前で味の感想を聞いてくる祖母に祖母の得意料理であるというパイを嫌いとは言えず、曖昧な笑顔ができてしまった。
それを見て祖母は「大人の味がわかる偉い子だねえ~」なんて言うもんだからますます嘘を重ねることになってしまった。
それからというもの私が行くたびに「せっかく来たならパイを作ってあげなきゃ」というパターンに、はまってしまう。
挙げ句に祖母が来ることもない私のパーティにまで毎回のようにパイを届けて来るようになってしまった。
時間を持て余しているのか人の誕生日なんかに贈り物をするのが趣味のような人で、そのことはいいのだが、こと料理に関してはありがた迷惑でしかなかった。
高齢で足もよくない祖母が良かれと思って作ってくれるパイを食べずに捨てることになるのに、私だって罪悪感を感じないわけではない。
だからパーティのことをすでに知っている祖母にあらかじめ電話で「今回はたくさんの料理をこちらで用意するし手間もかけたくない」と断りを入れていたのだ。
当日パーティのはじまる頃には雨も降り出していたし、料理も届かないだろうと思っていたところにずぶ濡れになりながら女の子が料理を届けにきた。
普段ならこんなこと言うこともないのに、今回は料理の拒否が成功したことの開放感にひたっていた私に、努力のかいなく結局、料理が来てしまう絶望感に変わったことからついつい得意げに届けに来てくれた女の子に怒りをぶつけてしまった。
「あたし、このパイきらいなのよね」
私がパーティしてる間にも私ぐらいの女の子が必死に働いているのに、その子に対して文句を言うなんてどうかしてるのはわかっている。
でも言ってしまった。祖母との誤解は未だに解決していない。
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