トッド・ブラウニング監督がサイレント時代の自らのヒット作「法の外」（1920）を10年後にトーキーでリメイク。「犯罪王リコ」（1930）で大ブレイクする直前のエドワード・G・ロビンソンがギャング役で助演。

ロサンゼルスの街頭。デパートのショーウインドウで下半身のない人間マネキンの芸をしている奇術師がいた。彼はペテン師フィンガーズ。こうして街の情報をチェックしながら愛人コニー(メアリー・ノーラン)と銀行強盗の計画を立てていたのだ。しかしこの町を縄張りとする冷酷なギャング、コブラ（エドワード・G・ロビンソン）は計画に気づき盗んだ金は山分けするように釘を刺す。強盗決行の当日、愛人コニーは訪ねてきたコブラに「来週強盗に入る」と偽るが、嘘を見破られて逃走。大金を手に入れたフィンガーズと共に隠れ家で潜伏生活を始める。。。

リメイク元ではロン・チェイニーが務めた凶悪ギャングの役回りを、当時まだ無名だったエドワード・G・ロビンソンが演じている。ブラウニング監督の演出下だと、ロビンソンの低身長や個性的な人相が奇形風に見えてくるのが面白い。

序盤はブラウニング監督ならではの人間マネキンや人間肖像画と見世物シーンが繰り出されて期待を高めるが、中盤の潜伏シークエンスが驚くほど冗長でヒロインの演技も弱いため全体的には残念な仕上がりだった。リメイク元の重要設定「ヒロインの父親の逮捕」「更生の師となる中国人儒教賢者の存在」が削られたため、エピソードが足りず心情の起伏も薄くなってしまったと思う。子供との出会いによる改心と破れ凧の影に十字架を連想する演出だけが前作から引き続き残されていた。

本作はブラウニング監督のトーキー２作目で、サイレントからの移行に大変苦労していたとのこと。結果、失敗作に近い仕上がりだったが、この経験が糧となり翌年「魔人ドラキュラ」（1931）という金字塔を打ち立てユニバーサル・ホラーの幕を開けることになる。大問題作「フリークス」（1932）はブラウニング監督のトーキー５作目だった。

※本作が作られた1930年にロン・チェイニーは47歳で亡くなった。「魔人ドラキュラ」は当初彼の主演で内定していた。

※リメイク元から引き続き同役で出演したのは凶悪ギャングの手下の小人ハンピーを演じたジョン・ジョージのみ