デニロ

魔像のデニロのレビュー・感想・評価

魔像(1952年製作の映画)
3.5
1952年製作。鈴木兵吾脚本、大曾根辰夫監督作品。林不忘の大岡政談を原作としているようだ。

昨年、国立映画アーカイブで『獄門帳』という大曾根辰夫監督作品を観て、何とダイナミックな演出だろうと目を瞠って以降、大曾根監督の名前が出ると何をさておいて出掛けることにしている。とはいってもそんなに頻繁に棚から引っ張り出されて上映されるわけではありませんが。

本作は、VODで。

役人たちの苛烈な苛めに堪忍袋が切れる様は浅野内匠頭かと思われる、そんな阪東妻三郎の屈辱シーンから始まる。阪妻の奥さんは町方の出の津島恵子。その彼女を阪妻に取られてしまった悔しさもあいまった苛めなのだが、実は腐敗した役所に対して阪妻は憤ってもいて、同僚たちには彼は目障りなのだ。浅野内匠頭が果たせなかったことを阪妻は一刀のもとに成し遂げる。うーん、その後は次々と連座するものを退治する。

情報通信会社に勤務する宰相の息子が総務省の役人たちと飯を食う。飯を食っただけだから会食ではない、と与党の幹事長なら宣うのだろうが、何処の後進国の話かと言えばわたしの住む国だった。なんだか怪しいぞ。いまやこの国は密会しても大丈夫とタカをくくられているのだろうか。姑息でもなんでもいいからどしどしと情報提供をしてもらいたいものだ。民間の不正の暴露は内部告発から始まることが多いではないか。

さて、本作も大曽根監督の手腕が光り阪妻が躍動する。そして、山田五十鈴がなんとも可愛らしい。リアルタイムで彼女を追えた観客が羨ましくもある。なにしろわたしは怖い顔をした彼女しか知らぬので。

最後は大岡政談らしく、腹黒い策士大岡越前守がいいところを持って行ってしまうのが微笑ましい。
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