カッパロー

秋刀魚の味のカッパローのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.8
昭和の幸せ。

小津映画ははじめて。日常を芸術に変えてしまう映像、丁寧だが退屈しない脚本、そこに生きているとしか思えない登場人物。どれをとっても感動の域にあるものだった。

1962年、62年前の幸せの形を描いた映画。主人公含め、登場人物は皆裕福。仕事にも家族にも恵まれ、生活には困っていない。そんな彼らの織りなす昭和の姿は現代人の視点からはひどく魅力的に映った。結婚観や男女観など、当然今の時代とは異なる点が多いけれどそれでも物語の中の登場人物は皆幸せそうだった。

昭和の暗いところを映さず恵まれた幸せな部分だけを切り取っているからと言ってしまえば簡単だが、今の社会でこれぐらいの立ち位置にいる人間を題材にしてもこれほどまでに美しく幸せに描けるだろうかと考えると疑問符が残る。

小津監督なら令和の日本をどう切り取るのかと妄想に耽りながら、他も覗いてみようと思う。
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