秋刀魚の味の作品情報・感想・評価

「秋刀魚の味」に投稿された感想・評価

カラーでも美しい小津作品。ローアングルに煙突、電車、挟み込まれるオブジェに固定カメラと。秋を思わせるような幸一夫妻のキャメルと赤の配色。麻で仕立てたかのような軽やかなグリーンを周平のオフィスに。佐久間の娘である春子が父親と自分を悲観してパッと落ちる暗闇。佐久間を囲む元生徒たちの距離感がなんとも言えない残酷さで胸に染みる。

おしなべて紳士的な周平がトリスbarで軍隊時代の部下である坂本とマーチを乗り出す普及点な対応。これらのシーケンスに加えて娘と同い年の会社のOLが結婚と、彼を動かす動機が伏線となっているように読める。作品が後半に近づくにつれ、予想は裏切られる。というのも、若い娘を娶った竜二や春子を違和感として受け止める彼からしたら結末は晴れやかなはずだ。内情はそうはいかない。そこにあるのは二項対立が生むカタルシスではなく、生真面目であるがゆえの苦悩だ。トリスのママを亡き母に重ねるには紳士過ぎたし、報われるべき理想像みたいな人を抉り出す孤独感よ。
んす夏

んす夏の感想・評価

5.0
朝日新聞の『人生の贈りもの』で岡田茉莉子が14回で連載されていたので改めて観ました。一回見るだけだと「いい映画だね」で終わるけど何回も何年にも渡って見てると岩下志麻の立場になって涙し笠智衆の立場になって泣けるし私事で恐縮ですが10月に結婚した母親の心境を想像して泣けるし、他の方々の感想を拝読しまた見直すと新たな発見あり、もう素晴らしい映画というのはこういうものかと。一生観続ける映画です
dio

dioの感想・評価

3.5
久々の小津作品。

上手く言葉にできない。凄い。全部理解できた訳じゃないけど。緻密で繊細な芸術的カットを一つ一つ紡いでこの作品は成り立っている。

日常を切り取っているはずなのに、この満ち満ちた哀愁ともどかしさはなんなのか。

秋刀魚など全く出てこないこの映画においてこのタイトルをつけた意味を追うことが私にとってのテーマの一つに追加された。名作。
じゅぺ

じゅぺの感想・評価

5.0
秋刀魚の味、大傑作。妻に先立たれ娘を送り出す父の老いと孤独。敗戦の記憶と共にひとつの時代が色あせていく。人生の終わりへと突き進んでいく男たちを描きながら、軽い音楽と酒にのせて、コミカルな会話は進んでいく。ひょうたんの娘が失った時間を思い泣く姿がキツすぎる。深い絶望を抱えた作品。
Catman

Catmanの感想・評価

5.0
小津はイイよなぁ〜(志村けんのいいよなおじさん風)
独特のショットや色彩設計、抑制が効いた演出、おっとりと間延びした会話のテンポなど、初めから終わりまで小津らしさが炸裂しまくり。これが遺作なんだけど、嬉しくって観ながらニヤニヤしてしまう。まるで名人の落語を観ている様です。善人も悪人も無い、市井の人々の日常の繊細な情感をすくい取って見せる感じ。いわゆるペーソス。侘び寂びの世界。こうした小津の作品が海外でも人気があると言うのは非常に興味深いです。
登場人物は皆がそれぞれ愛すべき人間なんだけど、とりわけ東野英治郎と杉村春子の二人に強い印象を受けます。いいよなぁ〜。笠智衆は言わずもがな、同窓生の食えない感じもめちゃめちゃ良い。酒を飲むシーンは全部良くって、バーでのあの感じとか感情移入しちゃうなぁ。
Masataka

Masatakaの感想・評価

4.3
「晩春」と続けて見ると面白い。娘の嫁入りというテーマはもちろん、家の玄関口を映す構図や、父が娘に「シャボン(石鹸)がないぞ」と言う細かいところまで、セルフオマージュ?が色々ある。

本作はカラーになったこともあり、より現代的にポップな作りになった印象。同窓ジジイ達の真顔で冗談を言い合うセリフ劇や、無様な酔っ払いとなる元教師、恐妻に頭の上がらない長男(佐田啓二、めっちゃ男前)など、クスクスと笑えるユーモアで溢れている。
溌剌とした透明感のある岩下志麻と、漸く実年齢が役柄に合ってきた笠智衆の演じる親子も「晩春」のような過剰さはなく、関係性がとても良かった。悪い人間は一人も出てこない、普通の人々の生活。タイトルにもそんな意味が込められているのかもしれない。
Linus

Linusの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

平山と恩師の人生。

最後のひとりぼっちかーの意味。

ひとりぼっちじゃなくても後悔するのは、恩師を見れば分かっていた。それでも辛い、けれどそれで良かった。


映画の主軸では無いけれど、ゴルフクラブのシーンがなんか良かった。

妻に頭上がらない夫がいることは、平和なこと。
展開より空間を味わってゆったり見ることができる。戦争の時代を思い起こしながら、流れる時代に置いて行かれて、それでも穏やかに自分を残して行ってしまうものの幸せを願っている。複数の作品で扱われている、この時代までの、お嫁に行くこと、行かせることの形式が、不思議なレンズを通してやけに輪郭を持って映される。外国の映画をたくさん見た後では、しみじみとゆっくり見られる。
やっぱりこの内容で杉村春子のあのエピソードをほとんど説明なしに入れて来るのは泣く。涙の理由はそういえば、と観ながら理解出来る。しかもコメディリリーフの笠智衆の同級生二人に悪態までつかせて。小津安次郎は残酷。同時にそういう状況を作り出しているダメな父親に喝を入れているのだろうか?

クライマックスの結婚に向けての端折り方も絶品。

昔の話のようで、今でもそこかしこにある話。ラスト間近のダメ息子の一言にもじーんと来る。
aymm

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3.9
古き良き日本の侘び寂びを、シンプルかつユーモアを交えて描いた作品。
セリフの言い回しが単調で可愛くて所々くすっとしてしまった。

時代は変わっていくから、いつのものが1番良い、正しいとは言えないはず。その時に合った流行りや思想がどんどん生まれると思う。柔軟に受け入れることが大事。
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