KAJI7

波止場のKAJI7のレビュー・感想・評価

波止場(1954年製作の映画)
3.9
何かを肯定するという行為の難しさ。

何かを肯定するということは、それでは無いものを否定するということ。
この自動性こそが人間が生きるということの難易度をグッとあげているメカニズムであり、優しさが悲しくも疑われ、正直者が馬鹿を見る世界の残酷さの根底にあるカラクリであるような気がします。

他者を信頼することが結果的に自分自身を拒絶することにつながったり、人に愛される事で人を愛する能力を失ったり、そんな当たり前の仕組みが、僕らの周りには常にぽっかりと大きく口を開けて漫然と寝転んでいて、それを回避するのに生涯の全てを費やすかのような生き方をしてしまうのが僕たち人間。

正しいか正しくないかはまさしくその二択の、目に見える分かりやすい例であって、とちらがドボンの選択肢なのかは後になってみても遂には分からない。
だからこそ、マーロン•ブランド演じるこの作品の主人公の描かれ方は、どんな人にもとても身近に思えると同時に、僕たちが無意識のうちに切り捨てている「悪」の本質に気づかせてくる、そんな人間の嫌な側面をありありと体現しているように思えます。

彼の目は一体スクリーンのどこを捉えていたのでしょうか?

単なるスカッとJapanでは終わらない、考えさせられる作品でした。
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