半兵衛

男の顔は履歴書の半兵衛のレビュー・感想・評価

男の顔は履歴書(1966年製作の映画)
3.8
三国人を扱っている映画のなかでも人種問題だったり差別の構造を取り扱っていたりと妙に真面目な作風なのはアクションややくざ映画に慣れてない松竹だからか。そして三国人とマーケットの問題を傍観者として見守るやくざではない安藤昇の医者が三国人の横暴に我慢できず殴り込みするという展開も不思議な流れ。

でもその分加藤泰監督のローアングルの使い方はよりこだわりをみせカメラアングルを考慮しての配置や動きが独特な魅力を放ち美学として完成されており、不馴れなやくざ映画という一言では片付けられない完成度の高い映画に仕上がっているので困る。モノホンのやくざだった安藤昇の動作を生かしたアクションも印象的。

唯一惜しいと思えるのはヒロインの中原早苗がおばさんっぽくてあまり魅力を感じないところか、確かに戦争をひきずり自分への愛に応えない安藤についていけなくなり中谷一郎とくっついていくという複雑な役柄は見事にこなしているけど。

この映画で最も輝いているのは三国人の一人である菅原文太である、今まで差別され抑圧されてきた立場を解放され自分を苛めてきた日本人を楽しそうにいたぶる姿は後年の東映任侠映画での活躍を予感させる。ただそんなバイオレンス演技はメロドラマ主体の松竹では生かされるわけがなく、東映へ移籍するのは必然だったのかも。

現在から戦後の過去を回想し、それがラストへ結び付くラストが巧いがあまりにも巧みなのでちょっと鼻につくかな。
半兵衛

半兵衛