みおこし

エディット・ピアフ愛の讃歌のみおこしのレビュー・感想・評価

3.8
フランスが誇る伝説の歌手エディット・ピアフの生涯を描き、主演のマリオン・コティヤールがアカデミー賞主演女優賞を獲得した1本。

パリの貧民街にある娼館で幼少期を過ごしながらも、歌の才能に恵まれた少女エディット。ある日、そんな彼女の可能性に目をつけた有名ナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプが彼女をスカウトし、歌手としてのデビューが決まるのだが...。

なんと短くて儚い47年の生涯だったのでしょう...。たくさんの伝記映画を観てきたけれど、こんなにも壮絶すぎる人生を他に私は知りません。親の愛情を知らずに育ち、さらには恩人の変死、報われぬ恋、交通事故からのモルヒネ中毒との戦い、さらにはリウマチを患い晩年は歩くことさえ叶わず...と様々な困難に直面。そのエネルギー溢れる歌唱からは想像できないほどに、彼女の人生は波乱と悲しみに満ちていました。それでもなお、あの美しい歌声で人々に喜びを届け続けたエディットは、まさにショーマンシップを体現する人物。今もなおフランスが誇るレジェンドとして名高いのも納得です。
もちろんどこまでが事実かどうかは分からないものの、ショーに対するエディットの情熱が裏目に出て、自己中心的な行動も絶えなかったと言います。しかし、それでも最期まで彼女を支えるスタッフや恋人に恵まれていたのは、彼女の生々しいほどに人間味あふれるその姿が魅力的だったからかもしれません。

「愛の讃歌」や「ばら色の人生」など、幸福感あふれるポジティブな曲が多いからこそ、対照的な彼女のバックストーリーに胸打たれる1本でした。
娘時代から晩年の背中が曲がって弱りきった姿まで、違和感全くなく演じきったマリオンの圧巻の演技力。エディットを知らない人でもぜひご覧いただきたい作品です。
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