蛸

黒いジャガーの蛸のレビュー・感想・評価

黒いジャガー(1971年製作の映画)
4.1
元祖ブラックスプロイテーション。主人公シャフトの名前は最早映画史上のアイコンだ。
ニューヨークの喧騒に揉まれながら歩くシャフトを捉えたオープニングは、この映画全体の内容を象徴している。有名なテーマ曲が映像に被さりシャフトのヒーロー性が否が応でも際立つ。彼は弱者に優しく腕っ節も立つ。機転も効く。その上女にもモテる。典型的なハードボイルドもののヒーローの特性を備えている。
ストーリーはかなりの王道。(私立探偵のシャフトが黒人マフィアのボスから、誘拐された娘の捜索を頼まれる。事件に深入りするにつれてシャフトは白人マフィアと黒人マフィアの抗争に巻き込まれていく。)堅実な演出で終盤までは地道に物語が進んでいく。特筆すべきは映画のラストにある。敵のいるホテルに突撃するシーン。着々と進む準備。緊迫感を極限まで高めての突入。あれよあれよと畳み掛けるアクション。そしてテーマ曲。このラストシーンは本当に素晴らしい。それまでの地道なストーリーテリングが一気に解消され半端じゃないカタルシスが生まれる。ここまでキレの良いエンディングには中々お目にかかれない。冒頭で昼の街から現れた主人公は夜の街に消えるのだ。
ところどころにあるスタイリッシュな映像も魅力的だ。ラストの舞台になるホテルの真っ赤な廊下や、登場人物達の部屋のインテリアなど美術的にも目を見張るシーンがある。この時代にしては性描写や流血描写も先進的に思えた。もちろん音楽もめちゃくちゃかっこいい。
映画全体を通して黒人と白人の、お互い腹の底では信用していない様子が描かれているがそれだけにシャフトとビクの友情は感動的。ただのプログラムピクチャーのようにも見えて随所に個性的な演出が光る快作だ。
※余談だが、タランティーノ版『ジャンゴ』の主人公カップルには、シャフトの先祖だという裏設定が存在する。この事実を噛み締めつつブラックエクスプロイテーションの歴史に想いを馳せるべし!
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