ひでぞう

白い肌の異常な夜のひでぞうのレビュー・感想・評価

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)
4.5
同じ原作のソフィア・コッポラ監督『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』(2017年)と比較する。まず、大きな違いは、黒人奴隷ハリーが描かれていること。『The Beguiled ビガイルド~』では、それが削られために、南北戦争の意味が全く理解できなかったが、この映画では、それが示され、同時に、南軍北軍に関わらず、兵士としての頼もしさと恐ろしさが、きちんと描かれる。そのために、この女学校の置かれた状況の切迫さも理解される。
 そして、『The Beguiled ビガイルド~』では、校長のマーサ・ファーンズワースの性的な過去が削除されていたが、『白い肌~』では、兄への恋情と、近親相姦が示唆され、マーサの抑圧された「性」とその欲望が説得的に描かれる。兄の服を着せることやラブ・レターで、その意味もよくわかるし、マクバニーに兄を求めようとする「欲望のめざめ」も明瞭である。マーサが、兄と性をマクバニーに意識するから、身体が接近し、眼をあわせるだけでも、画面からその緊張とエロスがよく伝わっていた。
 この映画は、ジョン・マクバニー伍長と他の女性たちとの会話が素晴らしい。無駄なものはなにもない。一つ一つのやりとりが気が利いていて、そこに込められた真意(性を意識する)を読みとろうとしていくなかで、映画のなかに自分も入り込み、緊張感が持続していく。人生のなかで観るべき映画の一つ。
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