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麦秋のripthisjointのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.0
麦秋とは6月末ごろのことで麦にとっての秋だという風情ある意味だけど、農家にとっては梅雨のために刈り取りを明日にするのか、明後日がいいのかと決めにくいもどかしさがあるらしい。

この物語は単に娘の嫁入りを麦の実りに例えたのではなく。いつ嫁に行くのかという家族のもどかしさを麦の刈り取りに似た心情としてタイトルに表しているのだろうと思った。

名匠であり名作であるから、ついついスタンダードに思ってしまうが、小津安二郎という監督の手法は本当に独特で変わってる。
主人公の記号的な笑顔を重ねることから平穏を描き、パターンを踏んでいるように会話を切り返しで見せるが、物語の転換点でその記号やパターンで心の影や光を表現する。微細にして大胆だ。他の監督が似たようなことをするとすぐにパクりと言われるような実にオリジナリティに満ちた演出だと思う。