群青

麦秋の群青のレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.5
実りの季節である「麦秋」というタイトルの通り、まさに家族の絶頂期を描いた映画。

小津安二郎監督が得意とするコメディーと人間ドラマのバランスが素晴らしい。

紀子の縁談を中心に物語が進むが、老いた祖父、娘を気にかける両親、元気ざかりの子どもを持つ兄夫婦と家族を多面的に描いているのが面白い。

一見すると楽しそうな家族だが、戦地から帰ってこない兄の省二のことが気がかりである等、陰の部分もあるのがリアル。

様々な出来事を経て、家族が並んで写真を撮るシーンは何度見ても良いと感じる。

紀子は専務に片想いしていたのだろう。「安心できるから」と謙吉を選んだのが深かった。

最初の海沿いをとぼとぼ歩く犬、紀子が嫁に来てくれると聞いて感激するたみ、東京の景色を眺める紀子と専務等、ひとつひとつのシーンが大事なもので見過ごせない。


2022.04.06.
群青

群青