「紀子三部作」の2作目。
冒頭の朝食の場面がまず素敵。ちゃぶ台やおひつから感じられる昔懐かしさ、三世帯が一同に集まり朝食をとるほんのりあたたかさ、それからブルジョワ家庭の優雅さが混合した、何とも心地よい映画の始まり。
そしてびっくり。その中の会話で、原節子と笠智衆の間柄が、本作ではなんと兄妹であることが見えてくるのだ。『晩春』では親子、『東京物語』では嫁・舅だったんだけど。
たしかに、黒髪フッサフサのヘアメイクと、頭に血が上りやすい人物造形からは、他の小津作品の笠智衆には見られない「若さ」が溢れている。
主人公・紀子の嫁入りをめぐって、前作以上に多彩な人間関係が展開されるのだが、中でも原節子と義姉の三宅邦子の友情が感動的に描かれている。交わされる言葉からは2人の強固な絆が窺い知れる。紀子が一番腹を割って話せる人物が、血縁関係にない義姉だったということ。
もしかして似た境遇をたどることになる2人は、共に戦後社会を生きる女同志としての戦友になる。
小津映画でも指折りの巧みな会話劇を楽しむ作品でもある。
エチケットと戦後の男女構造の変容についての会話、登場人物それぞれの幸福論を交わす場面はとりわけ強い印象を与える。
原節子と淡島千景の友達同士の会話はコメディ的で、声を出して笑える。
以下印象的だったシーン。
孫と菅井一郎演じるおじいちゃんの微笑ましいやり取りに癒された。
笠智衆と妻・三宅邦子が襖を開け閉めしながら、妹・原節子にバレないように、妹の話をしようとするシーンの細かい演出。
東山千栄子演じる母が戦死した息子を想う→母が鯉のぼりを眺めるシーン。子どもの健康を祈る母の気持ち。
もうすぐ離ればなれになる家族が最後に集合写真を撮るシーン。家族の肖像。
あと本作の杉村春子がすごく可愛かったことも書いておく!笑