あお

海洋天堂のあおのレビュー・感想・評価

海洋天堂(2010年製作の映画)
5.0
大好きな作品を、10年ぶりに。

アジアの作品に惹かれる。
静かで、暖かく、力強い作品。

市井の人々の生き様を描き、
深く胸に刻まれる作品たち。

ジェット・リーが自閉症の息子を持つ父親を演じたこの作品も、そんな中のひとつだ。

自分の余命が短いことを知った父親は、
自分の死後に息子が安心して暮らせる場所を必死に探し始める。

そして、生きる術を少しでも教えようとする。

独自の世界に生きて、人との永遠の別れにもどこか飄々としているように見える息子。

だが、父親亡き後、息子の中には、
確実に父から教わったことが息づいている。
卵を茹で、お弁当に持って行く。
バスに乗る。
降りるバス停では大きな声で、それを知らせる。

父親が愛してくれた記憶は、決して消えはしない。
彼の中にずっと存在し続け、満たし、内側から彼を見守り続ける。

青い水の中で、地上では少しぎこちなくもある体を自由に動かしながら、彼は永遠の父親の愛とつながる。
世界とつながる。

久石譲が手がけた音楽も素晴らしい。

ラストシーンでは、涙が滲んだ。
あお

あお