みなみ

銀河鉄道の夜のみなみのレビュー・感想・評価

銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)
5.0
数年前に出町座で観たのをずっと忘れられず、本当はもう一度映画館で観たかったのですが、仕方なく家で鑑賞しました。

ここまで忘れられない映画は初めてです。

宮沢賢治は大好きで、銀河鉄道の夜も何度か読んでいるのですが、映像でこんなにも生き生きと原作を表現できるのかと驚きました。
ほとんどのキャラクターが猫として登場しており、多くの言葉は発さず、大きな目で世界を見つめます。
彼らの"感情"はセリフや表情には現れませんが、その一方で、"感覚"が強調されているような気がしました。何度も繰り返される鐘の音や水の滴る音、ぼんやりと霞む光など、感覚をそのまま描いたような表現が印象的でした。
幸せとは何か、多くの他人の死の中にいてどう生きるのか、という人間普遍のテーマについて扱っていますが、説教くさい感じはせず、ただ世界の真実を淡々と描いているように思えました。何らかのメッセージをキャラクターに語らせる映画が多い中で、このような描き方にはすごく胸を打たれました。

作品全体が一つの交響曲のように響いていて、今も余韻から抜け出せそうにありません。またすぐに観たくなるんだろうな。
みなみ

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