碧

銀河鉄道の夜の碧のレビュー・感想・評価

銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)
4.0
ジョバンニはもの静かな瞳の青い猫に描かれている。
一見大胆に原作を変え、身近な動物で親近感を誘っているようだが、自然界に存在しない青猫は、人間の生々しさを極限まで排除した銀河の底に微かに明滅する宮澤賢治の魂の抽出。


ひかりはたもち、その電燈は失なはれ…。

最後に春と修羅の一節が流れる。


美しい幻想的な風景の中を走る汽車の中で選びようのない厳しい選択が提示され続ける。
カムパネルラは友ザネリを救うため川へ入るが、母を悲しませることを思って胸を痛める。
遭難した大型船の家庭教師は教え子を救うため他の子供を押しのけるのか、自分たちが滅びるべきかと苦しむ。


本当の幸いはどこにあるのか。生きるためには、幸せの裏には誰かの苦痛が必須なのか。


生活のため幼い頃から働き、母の体を労って家事をし疲労で朦朧とするジョバンニ。
他人のために自らを犠牲にした人々が乗る列車の中で、一緒にいたいと懇願するが、カムパネルラに涙を振り絞って突き放される。


本当の幸いは安易に自分を犠牲にすることじゃない。
つらくても精一杯生きて。
カムパネルラの涙で歪んだ眼差しにそう感じた。
碧