汽笛の音で目を覚ます

國民の創生の汽笛の音で目を覚ますのレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
1.8
D・W・グリフィスが監督を務めたアメリカ初の長編映画。およそ3時間もある。

クロスカッティング、クローズアップ、フラッシュバックなどの当時としては革新的な表現方法が特徴的で、アメリカ映画の基礎を確立したという意味では歴史的に貴重な作品。

一方で内容は歪んだ歴史観が故に、黒人差別を助長するようなものになっている。何といっても白人至上主義団体として知られているKKK(クー・クラックス・クラン)を、まるで英雄のように描いているのは今となっては考えられない。このように映画史の負の側面も持ち合わせているのが故に、これがアメリカ初の長編映画なのか…となる。

自分が黒人ならこの映画は直視できないけど、だからこそこの映画を反面教師にすることも結構大事だと感じる。政治的なことは現代でも充分ややこしい。右やら左やら勝手にレッテル貼りをして、自分たちの主張だけを通そうとする人たちはどこにでもいる。そんな人らと、この映画を作った人たちは構造として凄く似ている。そして、どちらも本当にそれが正しいことだと思っているからこそタチが悪い。

こういう状況は今でも形を変えて残り続けている。でも、悪気のない正義や思想による断罪は、自分を客観視したり、物事を俯瞰で見たりすることである程度は抑えられるはず。他人事だと思わず、肝に銘じておこうと思った。