どぅぐ

ディア・ドクターのどぅぐのレビュー・感想・評価

ディア・ドクター(2009年製作の映画)
3.8
医療ドタバタ奮闘記かと思いきや、物語を通して、奇妙な噛み合わなさが続いていき、最後の最後でオチが来た。
構成が凄く上手いなと思った。

医者になってみて、良かったと思うの?
という香川照之のセリフが印象的だった。

医療資料の偽造説明シーン。穏やかで長閑な映像の裏にじりじりと感じる緊迫感。見ている側だけが知っている構図は、やっぱり良いなと。

彼の存在は、所詮、足りない場所の埋め合わせに過ぎなかったらしい。
村社会における、過剰なまでの煽て上げ。個人に大して特別な思い入れがあって、そのような対応をしてる訳では無い。
問題が起これば、過去の恩など何処吹く風である。

凄いね、このへんのリアリティは、田舎に育った人でないと描けないと思った。

少し話は変わるが、田舎ほど職種や学歴によって、いとも容易く上下関係を判断すると思う。それは恐らく、区別することによって秩序が保たれるから、なのかもしれない。

上なのだから、上らしく振る舞え。
下なのだから、下らしく敬え。
士農工商で区別されていた江戸時代のある種、前近代的な思考が手を替え品を替え、田舎にはまだ残り続けている。
支配階級である武士は民を保護してきた。その責務を全う、つまり安堵することが出来なければお役御免だ。
日本社会においては、実は支配階級こそ取り替え可能な存在であって、民たちは、土着し続けていた。藩主が変わり、別の一族が国替えしてくることは多々あった。
今度のお殿様は、どんな方かしら。
今度のお医者さまは、どんな方かしら。
そんな歴史的な背景すら、改めて考えさせられた。
最後に温かさがあった。
形はどうであれ、責任だけは忘れない鶴瓶のキャラクターは憎めない。
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