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小説家を見つけたらのyukacafeのレビュー・感想・評価

小説家を見つけたら(2000年製作の映画)
4.2
映画を観る大きな楽しみの一つは、まだ観ていない過去の名作が山のようにあるということだ。この「小説家を見つけたら」も、これからの人生で何度も観直したい大切な作品になった。

年齢や立場を超えた心の交流を描いた作品には「セント・オブ・ウーマン」や「最強のふたり」など数多くの名作があるが、この作品に特に思い入れを持ったのは、文学を題材にしていたことが大きい。私自身、大学で米文学を専攻したので、「文学は将来何の役にも立たない」と揶揄されることに辟易していたのだが、最近ある大学の学部長が「文学がその真価を発揮するのは、人生の岐路に立った時だ」という趣旨の式辞を述べたという記事を読んで、一気に腑に落ちた気がした。

主人公の少年ジャマールにとって、文章を読むこと、書くことは、恵まれない環境をどうにか生き抜くための拠り所になっている。物語の中で彼はいくつもの問いや迷いに遭遇するのだが、その思考を助けてくれるのが文学だった。老作家フォレスターはまさに文学そのものとも言うべき存在で、だからこそ心を通わせることができたのだろう。人生が順調に進んでいる時には意識しないかもしれないが、文学を通じて様々な世界の価値観や考え方を知ることは、困難にぶつかった時、答えに迷った時にとても大きな救いになる。私にとってはもちろん、映画もそういう存在だ。

改めて触れるまでもないが、フォレスターを演じたショーン・コネリーの圧倒的な存在感と立ち居振る舞いのかっこよさには惚れ惚れした。恥ずかしながら、これまで彼の作品を2本しか観たことがなく、代表作である「007」シリーズやオスカーを獲得した「アンタッチャブル」も未見なのだが、なぜ彼が名優と呼ばれてきたのか、その理由がよくわかった。これから過去の名作を辿るのが楽しみだ。
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