くますけ

八月の鯨のくますけのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
4.0
冒頭。思わず間違えて同名の古い映画を借りてしまったのかと思った…

老いた姉はもはや目を失い、妹の手を借りなければならない。
思い通りにならない苛立ちと哀しみと孤独。
それに引きずられそうになっている妹。
そんな老姉妹のほんの数日。なんでもない日常。
生きることはずっと続いていく。

変化のない日々を何十年も、送ってきたのだろう。
それでも時間は確実に流れて、老いは足音を大きくするばかり。
死の影に怯え、生活を揺るがし、でもそうしてはじめて自分と向き合うことができるのは年老いても同じこと。

また鯨を待つのだ。ふたりで。
「鯨はいってしまったわ」「そんなのわからないわ」というのは、人生まだ終わってなんていないってきこえた。
美しいラストシーンだった。
とても心に残る映画だ。

姉妹の暮らしや衣装がとてもかわいらしい。きちんと正装する姿はまるで乙女。
そして何があっても変わらない海。
なんか、しみじみと、よかったなぁ。
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