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八月の鯨のGoachのレビュー・感想・評価

八月の鯨(1987年製作の映画)
4.3
渋谷に映画BARがあるのをご存知ですか?
映画のタイトルを伝えると、その映画をイメージしたカクテルを作ってくれる素敵なお店です。

そのお店の名前は「八月の鯨」といいます。
こんな素敵なお店の名前にもなった映画とは、どんな内容なんだろうなと思い視聴しました。このお店だけでなく、ゴスペラーズの曲名に使用されたりと、様々なインスピレーションを生んだ作品のようです。


「人生の終盤に差し掛かったときに、人はどんな生活をしているのか」

本作のテーマは、老後の日常です。
小さな島の別荘で夏を過ごす老姉妹と、彼女たちを取り巻く3人の老人たちの人間模様を描いています。毎年8月になると島の入り江に鯨が現れ、少女の頃から2人は鯨を見に行くのを楽しみにしている。長年連れ添った夫を亡くし、体も不自由になった老人姉妹の、人間ドラマをリアルに力強く描いた、味わい深い作品です。

僕には2人の祖母がいますが、この映画の主役同様に、いま現在は長い時間を1人で生活しています。(祖父はどちらも他界)。物語が進むにつれて「そうか、おばあちゃん達はこういう気持ちを胸に日々生きてるんだな...」と思いながら鑑賞しました。

この映画はドラマティックな展開はありません。老後の茫漠とした時間を体現するかのように、少しづつストーリーが展開します。多くの若い人には、この映画は退屈だと感じてしまうと思います。それでも、映画の魅力を「誰かの人生を生きれること」とするならば、誰もがやってくる老後を描いた本作は一見の価値ありだと思います。

1秒1秒、死に近づく中で、老後の生きがいは「生きること」なのだと、本作はゆっくりと教えてくれます。

ああ、おばあちゃん達に次回会った時はこんなこと聞こうかな、おじいちゃんとの出会いについてもっと聞いてみようかな、という小さなインスピレーションも貰いました。自分の明日を変えてくれる映画との出会いは貴重ですね!

年を重ねるごとに印象が変わりそうな作品。
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