あるぱか

赤ひげのあるぱかのレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
4.8
もうすっかり黒澤映画の虜になってるので、観る前から色眼鏡を掛けてる始末ですが、まぁ〜深い深い人間ドラマだった。
「赤ひげだ」って三船が言った瞬間におぉ〜〜!ってなるくらいにバイアスがかかってしまっていた。渋かっけえ!
3時間の映画、確かに長いんだけど内容を考えてみればあらゆる人の人生を追体験したかのように濃くてよく詰まってる。

中でも印象的なのは佐八の切ない半生。
群衆をうまく利用して感情を表現したり、豪雨→佐八の回想(静)→大量に揺れて鳴る風鈴など場面の切り替え方も絶妙。全く映像に関して知識がない自分でも凄い!とわかる明快さが魅力的で、本当に全てのシーンに無駄な要素を感じない。優しすぎる佐八にはこんな事実が隠されていたのかと驚くとともにその切ない半生に涙する。

赤ひげのキャラ設定もめちゃくちゃ面白い。威厳があって経験豊富、それでいて謙虚なのに、血気盛んな輩達を素手でぶち倒すし権力者を揺するし裕福な患者から高額な医療費を頂くなどとなかなか癖が強い!当初のヤスモトとは正反対で、人を診ることだけに人生を賭ける。名を上げるとか金を稼ぐとかではなくて患者のためには汚くて少しばかり卑怯なことでもする、人間くさい奴。その魅力的すぎる人間性に人々は惹かれ信頼していき、尊敬する。ヤスモトの姿勢が各エピソードごとで変化していく様が素晴らしい。その謙虚でひたむきな姿勢におとよの心が回復するのも感動のエピソードだった。

赤ひげは病気を治すのではなく心を治す。今の現代医学に足りないものかもしれない。自分も赤ひげの姿勢に感化されたけど、そんな人間が現場にいてくれたらと思わずにはいられない。
(でもやっぱりお金は欲しい)
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