たく

驟雨のたくのレビュー・感想・評価

驟雨(1956年製作の映画)
3.5
倦怠期を迎えた夫婦がちょっとした口喧嘩をする不穏な冒頭から始まり、男女の価値観の違いを見せながら雨降って地固まる的な小品コメディに仕上げてるところに成瀬監督の味が出ててなかなか良かった。

新婚旅行を早々に切り上げた姪っ子を演ずる若き香川京子が延々と夫の愚痴をぶちまけて、それを口喧嘩直後の夫にあてつけるように姪っ子側に立つ原節子、そこを必死に応戦する佐野周二の3人のやりとりがもう笑えてしょうがなかった。
隣に越してきた小林桂樹演ずる夫婦と男女の立場がお互い逆転してて、隣の芝生は青く見える的な要素が軸となってる。佐野周二が夫の尊厳を保とうと虚勢を張ってるけど実は気弱で、胃痛持ちなところにそれが象徴されてたね。

会社の経営難からの自主退職後の転身をめぐる同僚との話し合いの後で激しめの夫婦喧嘩となり、夫に呼ばれたのを無視して台所で飯を掻き込む原節子の吹っ切れた感じが良い。
ラストシーンは完璧!
BGMが全編ピアノ独奏のみで、サイレント映画を思わせる。
たく

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