明宏

七人の侍の明宏のレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
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面白い設定に、個性豊かな登場人物たちを配置したら、あとはその設定と登場人物に導かれるままに終幕へと向かう。ただただ面白い映画。

前半の仲間集めパートがまあ、面白い。
3回行われる勘兵衛の不意打ちテストが侍ごとに違った受けかたになっていて、7人の侍たちの性格を必要十分に語れているのが本当に見事。お手本のような脚本だ。

村に入ってからはとにかく守り抜くというストーリーかと思いきや中盤で相手のアジトまで奇襲をかけるところが面白い。そこでサブプロットであった利吉の妻のエピソードが苦々しく回収され、妻の炎を見つめるゾッとする微笑みとともに、1人の侍が死ぬことで一気に物語の重みが増す。
中盤に来るこういう物語を加速させるような場面が映画の中ではかなりアイデアを求められる所だと改めておもわされた。

笑えるシーンが沢山あるのが良い。
序盤で農民が「侍にあまっこを取られたらどうする?」と言うのに対して爺様が言う「首括るかも(首切られるかも?)しれんのに髭の心配してどうんすんだ」みたいなセリフがとても笑えた。

百姓たちがいよいよ最終決戦を目前にして疲れ果てているところに、久蔵が「痩せたな」と声をかけに行くシーンがなんとも優しくて、疲れと緊張でクタクタの百姓視点になってしまいその優しさに泣きそうになっちゃった。
(コメントにあるkinishikiのおすすめ動画で言われている福田里香先生のFOOD理論的に言えばここの「痩せたな」も飯を軸に考えられた台詞だったんだなと気づく。七人の侍やば……)

地図を使って村の配置を説明したり、相手の人数が何人減ったかを視覚的にその都度説明しているのも親切だし、面白がる上でとても大事だなと思った。
侍が村に来る場面でも、2人の百姓、6人の侍、+菊千代の9人が自然とグループごとにフレームに入ってくるように撮られているのもとにかく気が利いている。

ハッピーエンドのように見えたのに、「勝ったのは百姓であって我々にとっては負け戦だった」という苦さを残す終わり方も物語としてとてもかっこいい。
明宏

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