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七人の侍のKUBOのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
5.0
日劇が2月4日で閉館になるのを記念して行われている「さよなら日劇ラストショウ」に行ってきました。私の日劇最後の映画に選んだのは「七人の侍」。平日にもかかわらず、日劇はほぼ満員。シルバー世代ばかりかと思いきや、若い人もいて、大スクリーンで黒澤明を見たい人はいっぱいいるんだな〜と。何度も見た作品ですが、実はスクリーンでは初めての鑑賞です。

まずリマスターした映像の鮮明なことに驚く。その反面、以前鑑賞した時にも思ったことだが「音声」が歪んで何を言っているのかわからない。「絵」があれだけ補正できるのだから、「音」もクリアにできないものだろうか。

三船敏郎が若い! まだ駆け出しの時代だから役の上でもひよっこ扱いだが、爛々と光る目が野獣のよう。身の丈ほどの大剣を振り回す菊千代は、「バルセルク」のガッツのモデルなんじゃないかな?

また、ざっくり見ると侍たちの戦いばかりに目がいくが、今日は唯一のイケメン木村功に注目した。花畑で寝転ぶ「画」など、モノクロではあるが色が見えてくるようだ。

「落ち武者狩り」とか「種子島」とか、若い人は少し勉強してないとスッと理解できないところもあるんじゃないかな? テロップで流れる「轟」なんて読めるかな?

「今回も、また負け戦であったな。勝ったのは我々(侍)ではない。勝ったのは百姓だ。」志村喬の台詞だ。

本作はタイトルこそ「七人の侍」だが、「百姓」を描いた作品だ。「侍ジャパン」なんて言うけれど、日本人のほとんどは百姓だったんだ。

「百姓は我慢するしかねえだ!」

その根性が染み込んでいるから、日本人はどんなに苦しいことがあっても、たとえ震災にあっても我慢し、圧政に苦しめられても、諦めてしまうんだ。それは菊千代が大嫌いだった百姓根性なんだ。現実の世界には助けてくれる侍はいないが、いつの日か日本人は真の意味で立ち上がれるのだろうか? 野武士のような存在に「NO」と言えるようになるのだろうか?

田植えで終わるラストシーンは、それでも百姓は強いというメッセージだ。誰が天下を取ろうとも、日本は百姓によって支え続けられてきた。それは今でも変わらない。どんなに虐げられていても、国は民のものなのだと。

スピルバーグも、ルーカスも惚れた黒澤明の大傑作! 207分の長尺が全く長く感じない。全てのシーンに意味があり、全てのキャストが魅力的! 日劇の最後に、この作品を大スクリーンで見ることができて本当によかった! さよなら日劇!
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