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2046のHALのレビュー・感想・評価

2046(2004年製作の映画)
4.1
「1224ー1225ゾーンでは、温度が低いので、誰もが抱き合って身体を温める」
前作から全然違うトニー・レオン(髭が生えている)で驚いた。前作は自分の人生に忠実たろうとするような誠実さを感じたが、その過去を振り払うかのような色男に転身していた。そして木村拓哉が凄い良かった。若い時のトニー・レオンと何か似た雰囲気を感じる。はっきり言って、ウォン・カーウァイが苦手な自分がどんどん悪くて優しい男(トニー・レオン)にほだされていく映画だった。あと三作目が一番エロい。でもずっと優しいオーラを纏っているのほんとにすごいよ。色気とか怖さとかいろいろ言うけど、やっぱりトニーレオンの眼差しから感じるのは優しさなんだな。

中華屋で仲間と彼女が来るか賭けて罰ゲームで負けて髭を剃らされて、実は彼女が仲間と通じていて(ようはズルしていて)、怒ったようなふざけたような調子で遂に夜を共にする。賭けに負けたから仲間の分まで会計払わされてたけど、よくよく考えたら高い「蛇」料理は自分で頼んでたんだよな、とか考えるとわからなくなる、優しい蛇のような色男というべきか。しかし、だんだんと、その男のやさしさがどこから来るのか、心の底には悲しみを湛えた地底湖のようなものがあるのではないかと思ってしまう。男の過去である過去の二作にたびたび言及するが、これが60年代三部作といわれるように、この悲しみは香港の歴史にあるのだろうかと思いを馳せる。ここにきてやっと、ウォン・カーウァイの作品がただおしゃれなだけじゃないと思えた。監督はトニー・レオンの瞳の奥に何があるのか知りたくて作品を作っているような気すらする。トニーレオンの瞳は、観客だけでなくカメラ、映画そのものをも見つめてしまっているような。2047号室から2046号室(に現れる女たち)を覗き、小説を書いていく……という筋書きがヒッチコック的なものには全然ならないのは、覗いた彼女たちと話し、時には小説もともに書くトニーレオンの対等さにあるんだろうか。しかし長かった……後半のSF小説内の木村拓哉パートは非常に退屈で、そこで集中力が途切れたのか映画が失速したのか、なんだか退屈なまま最後は終わってしまった。結局恋する惑星とかも見なきゃなのかなぁ。三作見た感じだとやっぱり苦手なところもあるんだよなぁ。
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