Chico

詩人の血のChicoのレビュー・感想・評価

詩人の血(1930年製作の映画)
4.5
私はどのようにして映画の罠にはまったのか。 
- ジャン・コクトー

小説家、画家、詩人、映画監督などなど多才な顔を持つ、時代の籠児と呼ばれたジャン・コクトーによる前衛映画。ブニュエルの”アンダルシアの犬”と同時期に製作されたシュルレアリスム映画の代表作。(コクトーはのちにシュルレアリスム活動とは決別しているようです)4章に別れた全編50分とコンパクトな作品。

絵から飛び出し、手にのり移る腫瘍のような口。
美しい女の姿をした彫刻に息を吹き込み、
壁に耳をそばだてて夢の間をさまよう。
雪合戦と死、聴衆のささやき。
守護天使に抱かれ光に消失するその肉体。

“架空の世界を記録映画として描いた”というこの映画は、ブリュエルのような社会風刺的な側面はなく、コクトーのパーソナルな詩であるように思う。

芸術家としての名声と高い評価を得たコクトーはその消失と死を常に意識していたのではないかと思う。

立派な彫刻は名声の象徴でありその破壊は終わりを意味する。

死に取り憑かれた男、"恐るべき子供たち"で描いたような学童は自身を投影しているようにも見える。(最愛の人ラディゲの死が後を引き、何かが崩れ始め死がぐんと近くなったのかなとも思った)

と書きつつ、解読する必要はないのかもと思った。ただ絵画を眺めるように楽しむのが一番かも。

コクトー好き("恐るべき子供たち"好き)はもちろん、前衛芸術好きの方はハマると思います。あとパラジャーノフの”ざくろの色”みたいな、詩的なものをずっと観ていたい人にもおすすめ。
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