ワンコ

詩人の血のワンコのレビュー・感想・評価

詩人の血(1930年製作の映画)
4.0
【自由】

この「詩人の血」は、のちに制作される映画「オルフェ」や小説「恐るべき子供たち」の表現にも繋がる作品とされるが、それにもまして、コクトーの純粋さや自由さが垣間見られると思う。

コクトーはギリシャ神話や民話を好んだとされるが、それは、この作品の鏡を通して冥界とこちらを行き来するところや、生と死をどのように捉えるか、冥界とはどのようなところなのかなど、この映画では、コクトーのインスピレーションや独特のアイディアが散りばめられているように感じる。ちなみに、鏡は「オルフェ」で、雪合戦の場面は「恐るべき子供たち」で、そして、もしかしたら、こちら側の世界とあちら側の世界という感覚は「美女と野獣」でも生かされているのではないかと思う。

コクトーの作品はアバンギャルドだとか、シュールだとか表現されることが多いように思うけれども、こうした複雑さを暗示的に示すより、もっと具体的に更に簡単に考える方がしっくりくるのではないだろうか。
子供の頃、自分自身と鏡に映る自分が一緒なのか不思議に感じたことはないだろうか。
死んだらどうなるだろうなんて大人になっても割り切れない人はたくさんいるだろう。だから宗教が存続しているといっても過言じゃないかもしれない。もし、あの世があるとしたらどんな世界か。コクトーは枠組みに囚われず自由で純粋な気持ちを持っていたのだと思う。

ところで、美青年エンリケ・リベロは、のちに映画「オルフェ」で使われるコクトーのオルフェをモチーフにしたデザインのモデルになったんじゃないかと思った。
これについては、ひとつエピソードがあるので、「オルフェ」のレビューに書きたいと思います。
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