アバンギャルドの名に相応しい特殊撮影のオンパレードで、非常に楽しめた。
後の『オルフェ』に繋がる「鏡に入る」モチーフについて、『オルフェ』にあって今作にはないものは、すばり鏡の中からのショットである。(ジャンマレーの存在はここでは措く)
本作ではその代わりか、水を張ったプールを用意することでビジュアルに鏡に飛び込むショットを撮っている。
この二作の間に挟まる「鏡」を用いた映画とはいえば、マルクス兄弟の『我輩はカモである』だ。言わずもがな、有名な「鏡ネタ」のシーンで有名な映画である。
実はこの映画こそが、いわばコクトー映画史のミッシングリンクとして「鏡の奥からの視点」という要素をコクトーにもたらしたのではないかなどと、テキトーなことを考えながら見ていた。