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ゴールデンボーイのodyssのレビュー・感想・評価

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
3.0
【映画の核心はどこに?】

DVDにて。
原題は"Apt Pupil"、飲み込みの早い生徒、ってこと。

歴史の授業でナチの残虐な行為を教わった少年が、今も捕まっていない逃亡ナチが近くに住んでいると知ってしまう。だけど彼はチクらずに、代わりに元ナチを脅して強制収容所の体験談を聞いていく。おまけにSSの制服まで調達して、彼に着せてみる。やがて・・・

最初は結構面白いと思いながら見ていたんだけど、後半、浮浪者が元ナチの家に入ってくるあたりから筋書きがズレていって、病院のシーンもどこか納得が行かなかった。

特に一般住民が病院の前に集まって抗議行動をしているシーン。アメリカ人は、ナチに抗議するくらいなら、自分が過去にやった、いや、今もやっている黒人差別やインディアン虐殺に抗議行動を起こしたらどうなんだろうな。外国人のやった行為に抗議行動を起こす前にやることがあるだろ、と言いたくなる。自省の能力がないなあ。

それはさておき、見終えてもどこか中途半端な印象しか残らないのは、この映画の核心がどこにあるのか曖昧だからだろう。元ナチの生き方なのか、それとも少年の心にひそむ悪なのか。

元ナチの犯罪と、アメリカ人少年の心にひそむ悪が、実は同じものなのではないかと観客に考えさせるところまで行ければ傑作になったと思うんだけど、行かなかったんじゃないか。惜しい。
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