デニロ

桐島、部活やめるってよのデニロのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.5
導入部のランニングシーンからただならぬ雰囲気を漂わせていく。

金曜日。放課後。

違う角度から繰り返されるシーンに、登場人物の視線が交差していく。そして絡み合う熱視線。

こんなに美しい、可愛い、綺麗な同級生はいなかったような気がするが、それなりに魅力的な女の子はいたかな。そして男の子は、アンジェリーナ・ジョリーみたいな娘に恋しちゃうんだ。無理なんだけど。何年かたって、何であの娘のことに気付かなかったんだろうって、真剣に思う。そうなんだよ、吹奏部部長さん。

私はその時どこにいたのだろう。遠い昔の青春映画。繰り返される金曜日のざわめきに、私の知っている音や匂いが突き刺さってくる。彼がいて、彼女がいて、お前がいて、俺がいて、隠れ場所があって、いつもの帰り道があって。私が何者かとしてそこに確かにいたことを思い浮かべた。

クライマックスの活劇(撮影)シーンに吹奏部の荘厳な吹奏楽が被さり終える。何とも言えない至福の場面。撮り終えた後の映画部部長の視線を吹っ切った表情。吹奏部員たちが、今の演奏、すごく良かったんじゃない、と。吹き終えた後の吹奏部部長の視線が定まった表情。一歩前に。

校舎の屋上で交わされる男の子二人の会話。率直で、尊重し合っていて美しい。

毎日が単調で、まどろっこしくて、規制だらけで、しかも判断がつかなくて、口惜しくて。この時期の数年間は散々な気分かもしれないけれど、本当に短い時間が結晶化していく。それがダイヤモンドのようにキラキラ輝くのはまだ先のこととしても。

映画監督は無理。映画は好きだけど。泣けてくるよ、この映画部部長の台詞。あぁ、確かに私は映画監督に憧れていた。でも、映画のほうが好きだった。

桐島、部活やめるってよ すごく良かった!!

追伸
若い俳優さんたちよ。みんな、いい時に、いい映画に出た。
デニロ

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