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桐島、部活やめるってよのSHOHEIのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
3.7
高校バレー部のエース桐島が部活を突然退部した。学校にも姿を現さず学校中に動揺が広がる。彼女の梨沙、そして親友の宏樹ですらその事情を知らない。桐島がいなくなったことにより人間関係に微妙な変化が見え始める。無関係な映画部部員、前田にもやがてその余波は広がり…。

桐島不在で繰り広げられるヒューマンドラマ。同じ日の同じ出来事を別な生徒の視点で巻き戻し語り直される群像劇。映画版の一応の主人公は神木隆之介演じる前田。原作小説では野球部幽霊部員の宏樹が中心人物。しかし宏樹視点でも映画が成立するくらい良く出来ていると思う。ひとりのの不在が様々な生徒の関係に亀裂を及ぼす、青春時代の人間関係の脆さを炙り出す怪作。言葉少なめで視線や身振りで語る演技。秘密を抱えがちな思春期の内面をよく演出できていると思った。登場人物たちは親友にも言えない何かを隠し持っていて、学校中のスター的存在である桐島にもそれは同様。一方、前田は宏樹のようないわゆる陽キャの存在感に実は憧れを持っているし、青春なんて意味がないと考えている宏樹は懸命に映画を作ろうとする前田たちの姿に最後に胸を打たれる。個人的に「青春やったもんがち」的なメッセージを受け取った。最後にヒエラルキーが解消されたりするわけでもなく宏樹以外は何も前進しない物語なのだが、都合のいい展開にならないあたり学生生活のリアル。他にはどのキャラクターが自分に似ているか照らし合わせながら見たり、高校あるあるに頷きながら楽しむのが醍醐味らしいが自分の高校時代とはシチュエーションが結構違っていたため感情移入はあまりできなかった。でも前田が放課後戻った教室でうっかり橋本愛の彼氏を目撃してしまう場面はショックが計り知れないと同情した。
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