ゆう

桐島、部活やめるってよのゆうのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.9
(※とても長文です※)

だいすき。
この映画、本当に好き。

ストーリーはとてもシンプル。とある高校のバレー部員であり万能スターな"桐島"が部活を辞めることになる。そして彼を取り巻く周囲の生徒がザワつく。ただそれだけ。あまり大きな変化は起きない。

【大好きポイント】
①青春ドラマである。
②群像劇である。
③同じシーンを別の視点で描く他視点映像の手法を使っている。
④日常系であり映画的な事件は起きない。
⑤メガネ男子が映画部である。

もう、もうこれだけ大好きなポイントが所狭しと詰め込まれていたらそれはもう大好きな映画になること間違いなしですよ!!!

そして泣いたポイント
①映画部の前田くんがクラスメイトの女子に嬉しげにタランティーノ好き?とか聞くシーン
これ気持ちが分かりすぎて辛い。絶対同じ映画を観てるクラスメイトなんかいないって思ってて出会ったら、そりゃあ嬉しいし語りたいし仲良くなりたいし好きにもなるよね!!
②ラストの屋上での菊池くんと前田くんの掛け合いシーン
本来混じり合う筈のない、別の世界で生きる2人が対面して、カメラのレンズを通して心を見透かされたような気持ちになったであろう菊池くんが顔を歪ませ「俺はいいから…」と言う。こんな繊細でリアルで綺麗で切ないシーン他にありますかね!?もう、号泣。号泣。

この映画は、高校生達の心の中までも見えてしまいそうなくらい丁寧でリアルに描かれていて凄い。
話の中心にいる"桐島"は実はその本来見えてない部分を描く為の小道具にしか過ぎないのに、その"桐島"をタイトルに持ってくるセンスも凄い。映画の内容を的確に表してる。

高校のスクールカーストで言うところの上位の子達って、普段はきっとそこまで自分の内面を表に出さないしある意味で自分の立ち位置を演じてる。それは自分自身でも気付いてなかったりすると思う。
そこで、スターな"桐島"がいなくなって初めて、取り巻きだった自分達の姿が見えるようになる。彼女なのに、少しも知らない。親友なのに、何も聞かされていない。そんな状況になって初めて、今までの生活の中でのアイデンティティーが崩れ始め、本当の自分が見えてくる。周りのことも、見え始める。それは"桐島"とは直接関わらない生徒にも、波紋のように影響を及ぼしていく。(人は何かしらの形で関わり合い影響し合っているものなんだと思わさせられる)
そして上でも書いたけれど、普通に生きていたら絶対に交わらない世界の子にも目がいくようになって、交わる、それをきっかけに自分の世界(視野)が広がっていく。

「この世界で戦っていかなければいけない」
と言った映画部の前田くんも、自分自身の力で、菊池くんに勝った(と私は思う)。今までの生活では考えられないような成長をあの映画の中でしたんだと思う。

エンタメ的な大事件は起こらない話だけど、でも間違いなく登場人物たちは変化し、成長し、何かに気付く、乗り越えていく。
こんな短い尺の中でこれだけ沢山のドラマがうまく絡み合って個々の心情が表現されていく…。
撮り方も俳優も脚本も全部、ほぼ完璧。素晴らしすぎた。好みすぎた。

オールタイムベストに入りそう。

だいすき。大好き!
ゆう

ゆう