糸くず

肉体の門の糸くずのレビュー・感想・評価

肉体の門(1964年製作の映画)
3.7
坂口安吾の「堕落論」的人間観(「生きよ、墜ちよ」)で作られた女性たちの物語なんじゃないかと思うが、マッチョで反抗的な復員兵(宍戸錠)が娼婦たちの中心に君臨してしまうあたりに、昭和の男性作家が作った物語の限界が見える。

でも、鈴木清順の演出はじめスタッフの力量が半端ないので、物語の古臭さとは関係なしにするすると観れてしまうんだなぁ。特に山本直純の劇伴が素晴らしく、といっても太鼓の音が「ドン、ドン」と規則的に打ち鳴らされるだけの場面がほとんどなのだけど、それだけなのに不穏な感じが強烈で、耳に残る。

そして、野川由美子の大熱演! 「代表作」の名にふさわしい一世一代の演技。最後のどぶ川に浮かぶ日の丸の鮮やかな赤とともに、今でも観る価値あり。

〈1964年の映画 東京オリンピックがやってきた「あの頃」〉
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